※この記事にある解釈は公式の物でもファン共通のものでも私のオリジナルでもありません。
とにかく1話を見てくれ
ニコニコ動画が埋め込みやすいので。コメントが嫌な方は消してください
現代の冒険譚
1話見ましたか?2話が気になったら是非dアニメストアやNetflix、Unextなどの配信サイトで続きを見てください。
dアニメストア
https://anime.dmkt-sp.jp/animestore/ci_pc?workId=21949
Netflix
https://www.netflix.com/jp/title/80995912
UNEXT
https://video.unext.jp/title/SID0032770
ニコニコ動画(2000円弱でコメント付きで楽しむことが出来ます)
https://ch.nicovideo.jp/yorimoi
アマゾンプライム(何度か公開していましたが現在は有料になっています)
https://www.amazon.co.jp/%E5%AE%87%E5%AE%99%E3%82%88%E3%82%8A%E3%82%82%E9%81%A0%E3%81%84%E5%A0%B4%E6%89%80/dp/B078TMJR5F
ちなみに予告はWeb予告になっており、Youtubeから見る事が出来ます。(Youtubeにある公式以外の動画は転載ですので見ないでください)
揺れ動く感情を描く
このアニメは自分が大好きなだけではなく、国内はおろか、海外のアニメファンからも高く評価されています。それは南極や目の前の壁を仲間と共に乗り越えていくという国の文化に縛られないテーマもありますし、何より全ての登場人物の感情が揺れ動いた様をあらゆる演出(構成、作画、撮影、劇半)で徹底的に丁寧に描いている所にあると思います。
公式サイトにいしづか監督と花田さんのコメントがあるのですが、私はこれを読んだ時昔持っていた感情が蘇り、魂が震えるような感覚に襲われました。このアニメはいまそういう気持ちを抱えている方も勿論、かつて感情が揺れ動いた経験のあるかたも楽しめると思います。
カット単位の演出
では無粋かもしれませんが、1話の構成について全部ではないですが簡単に語っていこうと思います。長かったら飛ばしても大丈夫です。
リストの見方は左側に秒数、右側に内容となっております。
0:04 とまっている4羽の鳥
0:10 停泊しているしらせから砂場+笹船への切り替え
0:19 飛行機雲。
0:30 カットの背景に飛行機雲
0:31 流れ出す笹船
0:35 ベッドで寝てるキマリ。漫画雑誌のタイトルは全て「ロマンス」
0:46 掃除もされていない部屋。テーブルの上にプリンシェイク。
0:47 窓を開ける親
1:09 水で親に殺されるように起こされる
1:25 窓に飛行機雲
1:38 部屋の中に大きな鏡。キマリの部屋には鏡が沢山ある。
1:53 窓
2:04 何もできない自分に泣くしかないキマリ
2:15 OP開始。朝。カメラ(世界・運命)を回すキマリ。
2:28 チョークで何かを書いているキマリ
2:31 放課後。教室でつまらない事に時間を費やしてるキマリ
2:33 (舘林に実際にある)止まれの文字に日がさす
2:36 谷越ビル。昼から夜に時間が経過するとともに影が移動
2:39 チョークの落書きに加わる報瀬
2:43 下校時間。教室を抜けるキマリ
2:47 黒板に書かれた南極の昭和基地としらせ
2:52 チョークのらくがきに加わる日向と結月(2話以降に登場)
2:58 フリーマントルにある灯台の前にいる4人。位置関係で性格を表現。
3:03 飛び立つ鳥と4人
3:06 しらせの先端に立つ4人
3:11 「♪ジャンプして」で縄跳びを飛ぶ4人
3:12 南極活動の描写開始。ヘリから撮影する日向とキマリ。残り2人は高所恐怖症なので奥へ(吟も2人へ目線を送る)
3:19 フェイスカバーを外すキマリ。撮影する日向
3:22 案の定日焼けしているキマリ。
3:27 チョークで描かれたタイトル
3:51 OP終わり。教室。後ろで告白している学生
3:56 キマリの席はいわゆる主人公が座る窓際の席とは逆の廊下側
4:03 何かやらないといけないの背景に賞状
4:04 習字。ポジティブな周りの中一人だけプリンについて書くキマリ
4:09 背景で告白を成功させた学生
4:15 黒板「旅に出てみてはどうか」
4:27 「Enjoy your trip」
4:55 旅に行けばいいじゃないと会話する背景に右折の標識
5:44 出発早々濡れる靴
5:46 ミラーの「左右確認(飛び出し注意)」。すれ違う自転車。(A)
6:12 眼鏡のおじさん
6:24 学生とすれ違うキマリ(B)
6:46 傘の雫でどんどん濡れていく靴
6:52 たたまれた4色の傘(C)
6:56 付き合いはじめた学生
7:32 茂林寺。やまない雨
7:35 「少女のストロベリーティー」を飲んでいるめぐっちゃん。キマリはプリンシェイク
7:59 流れ出さない笹船
7:53 冒頭と逆向きに飛ぶ飛行機雲
8:36 この時キマリの背後には誰もいない
8:37 明らかに改札ではないホームの奥(キマリの背後方向)から走る報瀬(D)
8:42 一瞬でキマリを追い抜く報瀬
9:25 100万円拾った背後に「GET 1000000円 CHALLENGE」の看板
10:28 100万円の封筒を挟んだ倫理の教科書
11:45 思わずあけた扉に「しずかに!」のポスター
12:15 怒っているように見えて鏡の中で感謝
12:57 旗
13:06 報瀬の南極行きに皆反対するというシーンの背景に「一致団結」
13:11 南極に行く事を目的とした南極部の立ち上げに4名(ただし全員報瀬)のサイン
13:58 コンビニで買い物をするキマリとめぐっちゃんを見上げる日向
13:59 いしづかあつこや多くの他のスタッフが関わっているノーゲーム・ノーライフののぼり
14:04 コンビニの外を見る日向
14:09 光にいるめぐっちゃんと影にいるキマリ
14:19 「少女のストロベリーティー」を飲んでいるめぐっちゃん
14:41 足元の淀んだ水たまり
15:20 暗い図書室
15:31 暗い駐輪場を歩く報瀬
16:00 先ほどまで影の中にいたキマリが今は光の方からやってくる
16:29 夕陽の当たる東屋
16:31 東屋の中(陰)にいるキマリと報瀬
17:23 キマリに褒められてはじめての報瀬の笑顔
17:29 陽の当たる場所に移動する報瀬
17:39 「何か手伝えることない?あったら言って」
17:45 「じゃあ・・一緒に行く?」のタイミングでかかる「ハルカトオク」 +風。報瀬の顔には影がない。(E)
17:49 東屋の窓から光がキマリを照らす(レンズフレア)+風
18:28 キマリを試す報瀬。顔の1/4に光
18:54 蛇口からのしずくが傘のしずくに切り替わり再び靴を濡らす
19:33 片づけられた部屋
19:39 流れる水
19:49 鏡の中で動き出す電車
20:01 新幹線。すべて「のぞみ」
20:04 背景に地図を読むキマリと同じ格好の人物
20:05 眼鏡のおじさんふたたび
20:14 駅のホームに「少女のストロベリーティー」の看板(G)
20:25 報瀬の2回目の満面の笑顔
20:41 広い水面
22:41 飛行機雲(方向は冒頭と逆だが新幹線と同じ)
23:14 4羽のうち飛び立つ2羽の鳥
整理されたベタ(誉め言葉)な演出が新しい
振り返ってみると同じ象徴やシーンを形を変え何度も使っているのが分かります。鏡で内心を描いたり、窓をつかったり、光の演出などと併せて非常に古典的でベタな演出と言われるかもしれませんが、それを徹底的に整理された状態で効果的に使っているのがこの作品が1話から面白いと言われる所以なのかもしれません。
またそれだけは無く例えば(B)のようなあり得ない事(キマリとすれ違った学生は恐らくキマリと同じ学校の生徒なので現実に考えればすれ違うわけはない)を夢オチなどではなく現実のシーンでつかった今どきのアニメでは珍しい視覚的演出(この場合はキマリを生徒とすれ違わせることで、普段自分のいない世界に行こうとしている感じを出そうとしていると思われる)も楽しいですね。
ネットにはこの作品の伏線を扱った記事が沢山ありますが、個人的にこのアニメの心を揺さぶる構造を知るにはこういうベタな演出もにも注目した方がいいと思っています。まだこの先を見たことない方はとりあえず、何も考えずに1回見ていただき、2回目以降は類似しているシーンやセリフ、窓や扉、鏡、光、水、風、そして飛行機雲などがどのように使われているか観察することでより楽しめるかもしれません。
圧倒的分かりやすさとSNS適正の高さ
もちろんこのアニメだけが凄いというわけじゃなく他のアニメも同じ様に色々演出を練っていると思うのですが、このアニメが凄いのはそれだけじゃなくて圧倒的にわかりやすい所なのです。前の章で書いたようにベタな演出を連発しているのもこの分かりやすさに貢献しています。
ただそれだけではなく、ファン毎に解釈が生まれるし、色々とSNSで共有するのが楽しいという非常に今の時代に適したアニメだと言えると思います。
余談
例えば上の表は(A)の自転車に乗っているのが報瀬だというファンがいたりします。個人的には(C)は雨(障害となる水の演出)から守る物なので、キマリがこの後報瀬やOPにいる他の2人と出会って雨を克服することを暗示させているのではないか、(D)報瀬との出会いがキマリにとって突然で衝撃的だったことを表す、(E)キマリの「応援する」に対して報瀬の「一緒に行く?」は文脈的におかしいので、報瀬はずっと夢に一緒についてきてくれる人を探してただろうか、とか(G)キマリがめぐっちゃんの元から離れていく瞬間を描いていると思います。
面白いのに現実的
前述した(B)にあるようにこのアニメは意図的に嘘を付いている箇所が多く見られます。しかしそれ以外の描写にはファンタジーが含まれていない作品でもあるのです。
タイトルの「宇宙よりも遠い場所」は宇宙飛行士の毛利衛さんが昭和基地に行かれた時に「宇宙まではロケットですぐ行けるが南極は舟で数か月かかるので宇宙よりも遠いですね」(意訳)と話されたところから来ています。
また女子高生が南極へ行くという話も実際にジェイド・ハマイスターさんという方が達成していますし、日本人でも南谷真鈴さんという方が20代で7大陸最高峰制覇を成し遂げているので可能だと思います。
その他の描写も自衛隊など実際に南極観測に関わった機関や個人の方の協力の元制作されているのでほぼ実話という所も面白いと思います。ぜひ元ネタを探してみてください。
環境にも恵まれたアニメ
このアニメはその内容だけではなく2018年放送当時、非常に視聴環境にも恵まれていました。TV放送されたすぐ後にAmazonプライムやニコニコ生放送で再び見る事が出来て、SNSで感想を言い合いながらもう一度みてより楽しむことが出来るという理想的な流れが出来ていました。高い人気が出たのは作品自体の良さも勿論、その環境の良さもあると思います。
もっと知りたいという方に
このアニメは1話だけじゃなく13話が全てこのような構成になっています(※ShoyoFILMS調べ)。ネットにはこういう考察についてファンがまとめた物が沢山あるので、もし良ければご覧になってください。
https://w.atwiki.jp/yorimoifan/pages/17.html
特に村上ヒサシさんの「ここすき!!よりもい!!」と機能美pさんのまとめは是非見ていただきたいです。
あと公式の裏話としては上記Wikiに載っているネットニュースのインタビューの他、公式サイトやラジオCDとBlu-ray、DVDがまだ販売中なので良かったらそちらもお買い求めください。特にアニメの円盤4巻の12話のオーディオコメンタリーは非常に良い物となっております。
俺たちのロックスター
1話冒頭では自分の情けなさに泣くしかできなかったキマリ。しかし報瀬と運命的な出会いを果たしたことで最後のカットでは喜びに満ちていました。短時間でここまで変わっても同じキャラクターなのだと感じられる構成は多くのスタッフが努力を注ぎ込んだ結果生まれたのだと感じています。
宝箱のように演出が詰め込まれた22分でキマリの挫折と葛藤、成功を描いた「宇宙よりも遠い場所」。実は私は1話を見た時点ではただのいい話だな、としか思っていなかったのですが、次第にキマリや報瀬に共感を覚え、応援していき、最終的にはロックスターのように尊敬するようになっていました。ぜひ1話を見て面白いと思った方もそうでない方も7話までは見ていただけると幸いです。もしかしたら貴方の人生に流れ星のように輝く何かが訪れるかもしれません。
記事を書いた人