元ゲーム業界人による「マリオメーカー問題」に関する所感と対策

【10/7 追記】なんか凄いことになってる。皆さん、読んでくれてありがとうございます!!いろいろ意見をいただいて、私も凄い勉強になっています。コメントは当初全部にゆっくり返していくつもりでしたが、重複してる意見もあるし、さすがに200件に最初と同じペースで返すと1か月ぐらいかかってしまいます。そこで全部読ませていただきますが、自分が返したい奴だけ返すことにします。ヘタレで申し訳ありません。

「なんかランキングにマリオメーカーの動画増えてるなー」と思ってたらマリオメーカー問題なる言葉が出てきて話題になってたので、それに対する所感と自分なりの対策をまとめてみました。

結論からいうと

  • 私としてはどちらかというと現状を肯定しています。その上で対策を考えました。
  • 抗議動画などが提唱する「対策」には問題があります。
  • バラエティに富んだゲーム実況を楽しみたいなら総合ランキングはあきらめた方がいいのかもしれません
  • 今後ゲームを実況したかったら、可能な限り企業と連携する努力をして欲しいです。

お前は誰やねんという方へ

ShoyoFILMSと申します。マイクラが好きでスティーブの格好してクリスマスに秋葉を散歩した様子をブログにまとめたところ、いつの間にか超ユーザー記者として超会議にタダで参加させてもらったり、公式ニコ生に呼んでもらえるようになってしまいました。

元々ゲーム会社で働いていたので、ゲームの開発側にも少し明るい者です。ただ今は働いていませんし、今回の意見はゲーム業界の代表や一員でなく、ちょっと詳しいゲームファン、ゲーム実況好きのニコ厨の意見として聞いてください

マリオメーカー問題とは

スーパーマリオメーカー」という1つのゲームの動画がランキング上位にのぼり、ランキングのバラエティが少なくなってしまった、ということらしいです。

もともと総合ランキングはアニメなどがニコニコで配信されはじめてから、ユーザーが作った動画が減ってきており、また、クリエイター奨励プログラムなどでランキングに入った動画からその制作者(以下ランカー実況者)が数万円規模の収入を得ていることや、新作であるマリオメーカーを実況している(ゲーム実況では企業に配慮して最新作はやらない、という暗黙のルールのようなものがある)も不満の一因になっているようです。

確かに私もマリオメーカーの動画自体は割と楽しんで見ていましたが、そればかりで他の動画が少なくなってきているな。というのは感じています。

現状の対策の問題点

現状マリオメーカー問題に対して数名の方が抗議動画を挙げられ、対策をとろうとしています。しかしこの対策には問題点がいくつかあると思います。

1.問題として提起することで逆に注目が集まってしまう

まずこの件を問題として世の中に出してしまうことで、いままで興味がなかったニコニコユーザーおよび外部メディアが抗議をされた対象であるマリオメーカーの動画に興味を持ってしまい、逆に再生数が伸びることでランキングに長期的に留まってしまい、逆効果となる可能性があります。

特に抗議動画の中には「同様の内容の抗議動画を作ってアップしてほしい」とする意見もありますが私は上記の理由でそれはやめた方がいいと思います。

2.著作権違反のコンテンツを使って抗議してしまっている

全てではありませんが、10月3日にあげられた抗議動画3本を最後まで拝見しました。どれも内容に関しては非常にゲーム愛の深い動画ばかりで、元業界人として大変嬉しく感じましたが、残念ながらゲームの画面や音楽をおそらく無断で使ってしまっていると思われる物ばかりでした。当然ですが、こうした著作権違反な動画は権利者により内容の良し悪しにかかわらず、消されてしまう可能性があります。なのでそもそも抗議動画としては不適切かと思います。

また、ゲームというのはどの作品も(たとえクソゲーと呼ばれるようなものでも)、おそらく皆さんが想像されるより遥かに長い時間と多くの会社、そこで働く人の細かな仕事、そして沢山のお金により作られています。私が見た3本の抗議動画やその中で言及されている多くのゲーム実況は残念ながらこれを棄損してしまっている可能性が高いです。これは当然新作じゃないからOK、というわけではありません。むしろ新作ですが、今回抗議の対象はであるマリオメーカー動画はそのあたりのルールを守った動画であり、ルールを守っていない側がルールを守ってる動画を批難するのもどうかな、とちょっと思ってしまいます。

もし本当にゲーム実況の事を大事に考えているなら、ゲーム実況がアウトローな状態を固持することを望むのではなく、企業と一緒にいろんなユーザーがゲームをうまく盛り上げられる方向へ持っていく方が今後のゲーム実況のためにも良いと思っていますし、マリオメーカー動画はそうした方向へ企業やゲーム実況が動いている結果生まれたものだと思っています。

3.企業は利潤を追求する団体

抗議動画をされた方は「抗議によって企業やランカー実況者が考えを改めてくれ、今後はこのようにランキングが寡占されることは無くなる」と期待する方もいるでしょう。しかし少なくともゲーム会社は常に安く広報し、ゲームを沢山の人に買って貰える方法を探し続けています。勿論、そのゲーム内容や広報でファンに喜んでもらえるよう企画内容を練ったり最大限努力しますが、最終的には利潤が目的です。

仮に任天堂が今回の件でゲーム実況を容認しないという大きな経営判断をしたとしても、無数にある他のゲーム会社が同じことをするでしょうし、マリオメーカー動画を上げているランカー実況者全員が今後マリオメーカーと同じような動画を上げることを辞めたとしても、別のランカー実況者が現れるだけだと思います。同様にニコニコも基本的には利潤を追求する企業だと思います。利潤とユーザーからの要望、どちらを取るかといえば利潤である企業の方が多いでしょう。故に、よほどゲーム会社や有効な利益を得られる代案が提示されるか、抗議に賛同したプレミアムユーザーが多数退会してニコニコの財政が大幅に悪化するなどが発生しない限り現状が変わるとは思えません。(万が一そうなってニコニコが消滅しかけたら、ゲーム実況が発展する場を失うことになるので、ゲーム実況を愛する人々も本望ではないと思います)

クリエイター奨励プログラムでランカー実況者が高額な収入を得ていることも、企業が利潤を追求しているなかで下手するとユーザーがゲームを買わなくなってしまう危険性のあるゲーム実況にそれだけの価値を見出している結果と肯定的にとらえることはできないでしょうか。

ちなみに抗議動画に公式系の動画を排除したランキングを別途設けるというのがありましたが、総合ランキングが広告の手段として利用されている以上、新ランキングを設けて総合ランキングを見る人が減った場合、その新ランキングにも何らかの広告機能が設置されてしまう可能性は十分に考えられます。なので代案としてはあまり良いものでは無いと思っています。

私の対策

上記にある通り、マリオメーカー問題に抗議することは、改善される見込みが薄い対策だと思っています。そこで抗議する代わりにゲーム実況を今後も楽しめる状態を継続する私なりの対策をまとめます。

1.総合ランキング以外でゲーム実況を追う

総合ランキングに楽しめそうなゲーム実況がないのであれば、お気に入りの実況者のTwitterなどをフォローしたり、お気に入り登録をしたり、コミュニティがあればそれに入るのはいかがでしょうか。この方法であれば常に好きなゲーム実況を追えるだけはなく、実況者のアップしたての動画を楽しむことができますし、なによりランキングから見るよりも実況者にとってメリットがあります

2.面白い動画を広める

面白い動画があればそれを積極的に広めてみるのも、よい対策だと思います。SNSで広めることは勿論、ニコニコゲーム実況系のまとめブログを作ってみたり、動画紹介動画を作ったり、腕があればファンアートを描いたり。それによって面白いと感じる動画が総合ランキングに載るかどうかはわかりませんが、楽しめる人は確実に増やせます。またニコニコでは面白い動画をここから推薦することができます。こちらはうまく採用された場合、そこそこの確率で総合ランキングに載せることができます。

3.実況者であればぜひ企業と連携を検討して

抗議動画の問題点3で書いた通りゲーム会社は良い宣伝方法を常に求めています。また、ここ最近ゲーム実況との付き合い方を研究している企業も出てきており、総じてゲーム実況による効果を容認する流れになっています。PS4やXboxOneに簡易ながら実況機能が付いたのも、任天堂が新作ゲームの実況動画をOKしているのもこういう背景があるからです。

なお本問題の名前は任天堂のタイトルである「マリオメーカー」問題ですが、実はアリカとバンダイナムコもゲーム動画を容認しています。もしOKされている作品に大好きなゲームがあればガンガンやりましょう!

株式会社アリカ ニコニコ動画対策委員会ガイドライン
株式会社バンダイナムコエンターテインメント カタログIPプロジェクト

もしあなたがその会社のゲームを本当に愛していて、ゲーム実況をしたいと思いながらもゲーム会社にも配慮したいというのであれば、難しいからと言わずに、(まずそのゲーム会社がゲーム実況に対してガイドラインがあるか調べて、なさそうだったら)ぜひゲーム会社に連絡を取ってゲーム実況をしてよいか確認してみてください。もしアカウントがばれて今まで上げた動画が消されるのが怖いというのであれば、動画は見せずに、サブアカウントを使ったりしてもいいと思います。

ゲームによってはシナリオがキモなのでNGをもらうかもしれませんが、ゲーム内容がプレイヤーによって大きく違うゲームだったら、容認してくれるかもしれませんし、企画内容によっては広告価値が見いだしてくれ、公式に支援してくれるかもしれません。企業によってはゲーム実況の意義や隆盛そのものを知らない場合もあると思いますが、そこでランカー実況者の上げたマリオメーカーの盛り上がっている動画を例として送り付ければ、もしかしたらOKがもらえるかもしれませんw

余談ですが、ゲームを開発している人間はどうプレイされたか知りたいので、意外と再生数が少ない動画もちゃんと見ていたりします。あなたが公式にばれてないと思っているだけかもしれません。消されるかどうかを気にしながらゲーム実況を続けるより、企業に一度連絡をする方がはるかに精神衛生上よいと思います。

まとめ



image by pixabay

私はゲーム実況動画を「企業の作品に実況者の面白さや芸術性を載せたアウトロー的動画ジャンル」だと考えています。行ってみれば壁面に描かれたグラフィティようなものです。中には芸術性を認められて街から保存されている作品がある点もゲーム実況と似ていると思います。描く「壁」がなければグラフィティができないのと同じように、動画サイトやゲーム作品がなければゲーム実況はできません。

またゲーム実況は極力容認される作品を目指してほしいと思いながらも、全てのゲーム実況動画が容認されることはないとも思っています。もし容認されないゲーム実況をしたいのであれば、ニコニコやゲーム会社がランカー実況者で宣伝を行っている裏で、つまり総合ランキングなどに載らないようなところでゲーム実況を行うのが筋だと思います。

このマリオメーカー問題に対して出された抗議動画にはどれも物凄いエネルギーを感じました。願わくば、そのエネルギーを「壁」を破壊するのに使わず、ゲーム実況が発展する方向に向けて欲しいと、いちニコニコユーザーとして切に願っています。